1. 発見・化学名
1915年E. V. McCollumは,ネズミの成長増殖に不可欠の未知の栄養素として脂肪に溶けるものと水にとけるものがあることを明らかにし,それぞれ脂溶性A,水溶性B因子と名付けました.1922年J. C. Drummondは,この脂溶性Aのなかに複数のものが含まれることを見いだし,その一つをビタミンAと呼びました.その構造は1931年 P. C. Karrerにより,炭素20個からなるジテルペノイドに属し,鎖状構造式の末端にアルコール基を持つことが明らかにされました.その後このアルコールが酸化されたアルデヒド体やカルボン酸が生体内において活性本体として作用していることが判明し,同じ生理作用をもつ合成化合物も含め,これらを総称しレチノイド(網膜[retina]より得られた一群の類縁化合物)と呼ばれています.一般に,ビタミンAという場合にはこの中のアルコール体(レチノール)を指しています.
また,緑黄色野菜に含まれるカロテノイドの一部には,動物体内でビタミンAに変わるもののあることが知られており,これらはビタミンAとしての効力をもつためプロビタミンAと呼ばれています.